- Vol.39 28年前の私からのプレゼント ―あなたへのおくりものー
- Vol.38 うーん…途中まではいいんだけれど、ちょっと違う??
- Vol.37 発展と進歩
- Vol.36 音楽はすばらしい
- Vol.35 心に届く言葉、届かない言葉
- Vol. 34 2020年の仕事はじめ
- Vol. 33 That’s the way it is.
- Vol.32 徒然なるままに
- Vol.31 勉強ってなあに?
- Vol.30 京都の春
- Vol.29 正確な日本語?
- Vol.28 引っ越し、執筆、講演、そして引っ越し
- Vol.27 〇月×日
- Vol.26 It's not easy to write textbooks.
- Vol.25 Even a pig climb a tree when flattered!? 豚もおだてりゃ木に登る
Vol.2 「甘やかす」VS. 「安心させる」
昨年から大学院で勉強を始めました。なぜ今さら勉強するのか? とよく聞かれます。教育心理学の理論を勉強することによって、今まで自分が経験を通じて信じてきたことを立証するためです。ずっと、本を書いたり人に講演をしたりと「出す」ことをしていたので、「学ぶ」ことはとても新鮮で楽しみです。
長年、児童英語教育に携わっていますと、子ども達のアサーション、つまり自分の考え、欲求、気持ちなどを率直に、正直に、その場の状況に合った適切な方法で自己表現できる能力の大切さがわかります。我々は英語という「教科」を教えているのではなく「言語」を教えているので、ただゲームをしたりお遊戯をするだけのレッスンではなく、しっかりとした自分の言葉を持つ子ども達を育てなければなりません。子ども達一人一人の日常の行動や考えの規範が重要です。
下の図は、アメリカ、中国、日本の大人を回答者とした「子どもの自由意志」に関するアンケートの結果です。
1 | 2 | 3 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
本人の自由 | いけない | 本人の自由 | いけない | 本人の自由 | いけない | |
親に反抗する | 79% | 21% | 15.8% | 81.5% | 18.8% | 80.3% |
学校の先生に 反抗する |
84.5% | 15.2% | 16.1% | 81.5% | 14.7% | 84.4% |
タレントの真似 | 94.5% | 5.1% | 66% | 31.7% | 38.5% | 61% |
学校の制服の変形 | 91.6% | 8.3% | 24% | 73% | 38.1% | 60.9% |
例えば1の国では親に反抗することは79%の人が本人(=子ども)の自由で、21%が親に反抗することはいけないと答えていますが、2の国では15.8%が、3の国では18.8%が子どもの自由と答えています。国によって答えがずいぶん異なりますね。
では1、2、3のそれぞれの国名を当ててください。
…答えは、1が日本、2がアメリカ、3が中国です。
日本の大人が他の2つの国に比べて、子どものしつけに対して非常に甘いことがわかります。よくお母さんから「自立を促すために子どもの意思に任せます」という言葉を聞きますが、これは判断能力がまだできていない子どもに判断させていることになり、逆に言えば親が、子どもを育てる責任から逃れているにすぎません。
子どもに家庭や社会の規範をしっかりと身に付けさせるのが親の役目です。「良い」親からも「だめな」親からも良い子どもは育ちます。一番いけないのは「責任放棄を“放任主義”と履き違えている親」と「迷う親」なのです。
しっかりとした判断力を持つ子どもに育てるには、まず大人(親、先生、学校)が、何が正しくて何が悪いのかという基準を、責任と自信(権威)を持って子どもに示していくことが大事です。甘やかすという英語はspoilを通常使用します。Spoilは「駄目にする」「腐らせる」という本来の意味を持っていることは、皆さんもご承知ですね。
大学院の学校臨床心理学の授業では、子どもの人格形成は、まず5歳で定まることを学びました。5歳までに家族から100%愛され、受け入れられる経験をした子どもは、その人格にいつでも帰ることのできる「枠」ができるそうで、その枠ができていれば成長過程で不登校や社会不適合な行動が起こってきても、必ず直るそうです。また教育心理学特論では、対人関係能力調査で、自分の家族に対して肯定的な安心感を持つ子どもは、他者を受容する能力が育つことを学びました。
最近、 「しつけ」と称する子どもへの虐待が問題になっていますが、幼い時に親がきっちりとした“心のhome”(子どもにとって親という名のシェルターかもしれません)を作り、その上でしつけをしなければなりません。私も過去30年間、子ども達を叱るには、まずその子とのゆるぎない信頼関係を築いた上で、叱ることを実践してきました。
23、24歳の大学院生の皆さんと机を並べつつ、「ふん、ふん、やっぱりそうか!」と1人、にんまりしながら授業を受けています。