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なかもとと友かな

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ご存じアプリコット出版筆頭著者。 元AIM English Studio (大阪・堺市)主宰。 Learning World series、『キッズ英語絵本シリーズ』等アプリコット出版刊行物多数。 幼児・小・中・高・大学・大人と全年齢層の英語教育実践家で児童英語教師のカリスマ的存在。 APRICOT児童英語教師養成講座講師。Learning World 認定校スーパーバイザー。
  • Vol.38  うーん…途中まではいいんだけれど、ちょっと違う??

    猛威を振るうコロナ、戦争、異常気象、物価高騰、その他、耳を塞ぎたくなるようなニュースが続き、ともすれば自分まで渦中に巻き込まれ、落ち込んでしまう日々がつづきます。

    こんな時、クラスの子どもたちの明るい声や楽しそうな様子にどれだけ励まされ、勇気をもらえることでしょうか。

    中本、久々のエッセイです。

     

    現在住んでいる兵庫県芦屋市で、芦屋市国際交流協会主催、芦屋市教育委員会後援のもと、小学校英語教育勉強会なるものの企画、講師を命ぜられ、7月から始めました。10回シリーズで、1回2時間のうち1時間半は講義、あとの30分は先生方のアイデアのシェア、悩みのシェアタイムです。

    そのこともあり、普段まったく目を通さない他社のテキスト、文科省認定教科書やLet’s Try 1, 2を見る機会がありました。 今まで目を通さなかった理由は、知らないうちにアイデアが類似する可能性を持ちたくない気持ちがあるのと、ラーニングワールドシリーズで自分の理念を通したいという願望からです。

     

    ラーニングワールドを使い始めた先生から、「子どもたちの食いつきが違う」、「目の輝きが違う」という言葉をよくいただきます。パターンプラクティスのやりとりや、あまり活動的でない歌や、アルファベットの書き方を教えていると、先生は楽です。

    確かに、ラーニングワールドのテキストで教えていると、教える側にもエネルギーがいりますよね。 子どもたち一人一人をしっかりと見て、受け入れ、彼らから言葉を引き出し、認め、歌やチャンツで楽しく定着させ、その後、クラスの中で英語を使って話すようにするには、指導者側も子どもたち側にもエネルギーが必要です。ですが、そのエネルギーが、学びの楽しさにつながっていくのだと思います。

     

    従来の行動主義心理学的な言語教育(主にオーディオリンガルメソッド)のダイアログの暗記、パターンプラクティス中心の教育では、英語によるコミュニケーション能力が育たないという反省から、認知主義的言語教育に大きく舵を切った昨今、どのテキストも「コミュニケーション活動」、「インフォメーションギャップ」、「自己表現活動」、「チャンツ」、「うた」、「フォニックス」というキーワードを使って構成されるようになりましたが、その指導法や活動の内容を精読しますと… ???   途中までは良いんだけれど…  ちょっと違う(?)ような気がするのは私だけでしょうか。 今回は、その一部を取り上げてみたいと思います。

     

    コミュニケーション活動とは、自分の考えや要求、情報を相手と授受することで達成できる活動で、そこには必ず互いの持っている情報の違いがあり、その情報を言葉のやりとりによって埋めなければいけない、つまり、言葉を使う理由があるはずです。 伝え方や尋ね方、考え方や答えは一つでない場合もあります。先生が示した英語の文の練習(パターンプラクティス)のために行う活動ではありません。

     

    パターンプラクティスをコミュニケーション活動と混同している例をあげてみましょう。

     

    例1 コミュニケーション活動 or (生徒が教室を動き回る)パターンプラクティス?

    それぞれ違ったカードを持って、同じカードを持っている人を教室内を歩いて探す活動:

    カードを持っているなら英語で聞くより相手のカードを見た方が早い。英語を使う理由がない(ある提示された英語を繰り返して練習するのが隠れ目的)。これはコミュニケーション活動ではなく、パターンプラクティスです。

     

    例2 自己表現活動 or (選択肢の中から選んで練習する)パターンプラクティス?

    I like … と一人一人違った答えを言う活動:

    選択肢を先に示して練習すると、生徒は当然ながらその中から選びます。子どもたちの本当の言葉ではない。これもメタ認知が働いていない。パターンプラクティスです。 I like tomatoes ! と 元気よく言っても「それ本当?」と疑いたくなります。 英語学習の入門期には選択肢を示すこともありますが、子どもたちから本当に言いたい言葉を引き出すためには、徐々に選択肢なくし、自由な発想をさせる必要があります。

     

    例3  否定形にする意味

    次の文を否定形にしなさい。

    1.Jenny likes apples.

    2.  The sun goes around the earth.

    もうお分かりのように、1.には否定形にする必要性がない一方、2.は否定形にする必要があります。

     

    このように、コミュニケーション活動と紹介されている活動が、実際にはパターンプラクティスの域を出ていないことが多くあります。パターンプラクティスは英語のパターンを定着させるのに有効ですが、そこにはメタ認知が働いていないので「言語活動」ではないことを知っておくべきです。

    教える順序としては、まずコミュニケーション活動を行った後に、そこで使った英語のパターンを、リズムやパターンプラクティスを使って定着させます。

     

    次に、「???・・・ちょっと違う!」チャンツとリズムの違いについて。

    チャンツもリズムも定着には効果的です。では「チャンツ」と「リズム」で教えることの差はどこにあるのでしょう。

    まずリズムは、ターゲットのパターンにリズムをつけて覚えやすくしたものです。一方チャンツは元来教会で経典の一部を掛け合いで唱和したことから始まり、キャロリン・グラハム先生が、ジャズのリズムを英語教育に応用したことから始まりました。チャンツには掛け合いが多く、ストーリーというか、すぐ使えるauthentic性があります。リズムとチャンツの例をあげます。

     

    ・英語のパターンをリズムで覚える:

    Can you swim?  Can you swim?    Yes, I can.  Yes, I can.

    Can you ski?     Can you ski?         No, I can’t.  No, I can’t.

     

    ・掛け合いチャンツ:

    A:  You can do it.    —-  B:   No, I can’t.

    A:  You can do it. —-   B:  No, I can’t.

    A:  Try it.  Try it.  You can do it!

    B:   I made it.  I made it.  I made it.  All right!

    A:  You made it.  You made it.  You made it.  All right!

     

    両者とも子どもたちはすぐ覚えますが、掛け合いでストーリー性があると、「食いつき」と「定着力」が全く違います。子どもたちは場面を想像し、場面が理解できるので、楽しく掛け合いをし、覚えた英語を実際に使うようになるのです。また、内容を考えスピードを変えると、子どもたちの “ノリ” が違います。

    Busy, busy, busy. We are busy all day long.チャンツ(Learning World Book3)は、忙しさを表現するためにテンポをどんどん速くしました。速くなるにつれ子どもたちの目が輝いてきます。

    やはり、教えるなら、楽しくなくっちゃ。

     

    これらはちょっとしたことなのですが、この「ちょっとのちがい」で、What is English — 英語とは何かを教える授業から、How to use English — 英語の使い方を教える授業に変わり、先生中心の授業から、子どもたちが積極的に参加したくなる授業に変化します。 そして、この積み重ねが、英語を道具として使える能力を育てる大きな違いとして現れます。プロの英語教師として、子どもたちを客観的に観察し、彼らの好奇心を開花させるように導くことが大切です。

    子どもたちが伸び伸びと、楽しく学べる授業をめざして、今日もかんばりましょう。

     

     

     

     

     

     

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