改めて多読についてご紹介すると、多読の定義は次の通りです。
• 多読とは、辞書無しでも、十分に理解できる易しい英語の本を、楽しく、速く読むことです。
(『国際多読教育学会による多読指導ガイド』、2011)。
楽しく、速く読むためには、読む素材は子供に合ったレベルでなければなりません。知らない単語がたくさんあると、読む速度が遅くなり、理解度も低くなります。そして、分からない単語や構文を調べ始めると「多読」ではなく「精読」になります。本を読むという行為は精読と多読に分けられ、英語学習においてもその読書法は全く違います。
• 精読(=深く読む)Intensive Reading⇒英語学習テキスト。音声を何度も聞いて音読し、辞書で単語の意味を確認、文構造を理解しながら正確に読む
• 多読(=大量に速く読む)Extensive Reading⇒ORTやSpringboardなど幅広く、自分の英語力よりも易しいレベルの本を大量に読む
「読み方のコツ」は、負担にならないよう、簡単なレベルからスタートすることです。
<マシュー先生の実践編>
アプリコット出版のプレゼンター、Matthew de Wilde先生(マシュー先生)はSpringboardシリーズを愛用されていますが、多読導入はLearning World Book1クラスからで、多読を始めるタイミングについて、以下の明確な基準を設けています。
- 生徒がちゃんと目と耳を先生に集中して対話することができる。
- 生徒が対話の中で適切な受け答えをすることができる。
上記のような対面でのコミュニケーションが難しい場合は、読む授業には早すぎるとマシュー先生は考えておられます。
また、アルファベットの音に慣れていない場合は、多読を始める前にClick on Pnohicsのカードを使い、three letter wordsが読めるように指導します。
国際多読教育学会でも、「英語では綴りと発音が必ずしも一致していないので、フォニックスの学習は非常に有益で、学習者によっては必ず必要な場合もある」と指摘しています。
実際にClick on Phonicsを使っている動画はこちらをご覧ください。
Click on Phonicsなどでthree letter wordsが読めるレベルまで達していれば、SpringboardのLevel 1に出てくる語彙もほぼ読めるようになっているので、多読を始める準備が整ったといえます。
多読を始めるに際して、この準備段階が非常に大切になります。辞書無しで、楽しく、速く読むためには、本に出てくる語彙が98%以上分かる(=多読の「スイートスポット」)必要があると言われていますので、最初の1冊で子供がつまずかないように、導入のタイミングは注意深く見極めてください。
■多読導入のコツ:
難しい本をあてがうと、語彙の意味が取れず挫折するので注意。敢えて易しいレベルのものから開始する。
*子供達の中には「見栄を張ってレベルの高いものを手に取るケースがあるので要注意。「調べない、覚えない」を意識し、おおざっぱに意味を取りながら読む。
<多読を始めるのに最適な本は?>
初めて多読に挑戦する子供達のために、思わず手に取りたくなるような、楽しく興味深いお話を集め、かつ難易度を段階的に設定している読み物がグレイデッド・リーダーズ(Greaded Readers)です。
アプリコット出版が取り扱うSpringboardもグレイデッド・リーダーズであり、専門家によって細かくレベル分けされ、単語数も制限された中で、自然かつ標準的な文法の英語で書かれています。このシリーズは、各レベル間の差が小さく、段階を追ってスムーズに学習を続けやすいよう工夫されており、また同じ難易度の本がジャンルの違う内容で8冊あるので、子供自身が自分好みのレベルに合ったものを選ぶことができます。マシュー先生も長年、Springboardを多読テキストとして使用されています。マシュー先生がされている実践的な工夫はこちらから。
“I’m still convinced SPRINGBOARD is the best material to help kids get started with reading, remain motivated to read, and generally feel success with reading.” Matthew’s blog
★多読を続けるための工夫と注意点★
- メインテキストで英語力に差異がある場合、多読は個人のペースで継続することができるので副教材として導入しやすい(隣の生徒と読むレベルが違っていてもあまり気にならない)
- 生徒によっては4技能のスキルに差異があるので、導入しても多読になじめない子供達には、音声を使って音読しながら読んでもよい(文字だけを追って意味を理解することになじめない場合)
- 多読の性質上、今のテキストレベルとは関係なく、ほぼ意味が取れるやさしいレベルからスタートすることが大切。先生の補足がないと自力で読めない場合、英語嫌いを生んでしまいかねないので注意。
- 慣れるまでは音読教材として導入し、その後、ほぼ文字を自分で音読できるようになれば、音声での導入は割愛してもOK。
- 英文は左から右に、語順の通りに読む(後ろからの「帰り読み」はしない)
- いやいややらせない。つまらないと感じたら他の本へ。(本の中にはつまらないと感じるものがあって当然。その場合は強制しない)
- わからない箇所はとばす(1語1語全ての意味をわかろうとしない。60-80%の理解度で意味を取る練習であることを忘れない。)
- 辞書を引きたい場合は読みながら引くことはしない。意味をちゃんと知りたい場合は1冊読み終えてからにする。
進度を図るチェックシートを作ると、生徒個々のプログレスがわかり、生徒にも教師にも保護者にも見える化できる。チェックシートについてはこちら
<多読の効果とは?>
- 読み慣れてくると、英語の苦手意識がなくなる!(情意面の変化)
- 読むスピードが速くなる (Reading力の向上)
- リスニング能力があがる (Listening力の向上)
- 文の構造への理解が深まる(文法理解の向上)
- 英語に触れる時間、触れる量を増やすことができる(英語の習慣化)=英語の基礎力アップに繋がる
◆Learning Worldをお使いで多読の導入を検討されておられる方へ
Learning World で、WELCOME PINK, YELLOW, BLUE(のうち少なくとも2冊)を経て、Book1, READYを終えたら、多読の本をレッスン開始までの時間や、プラス1レッスンで「多読」をやることで、英文処理能力のスピードがあがります。アプリコット出版にも、テキストを丸ごと1冊暗記するだけでなく、薄い英語の本を継続して読んでいくことで成果が予想以上に出ているという声が沢山届いています。
★多読実践者の生徒や先生方を一部紹介★
- 最初は英文を見るのもいやだったけど、紙面の半分は写真や絵だったので読みやすい。
- 1冊が薄いので継続できた。
- 1冊読む時間が速くなった。
- 読み始めた頃に比べると、けっこう文字の多い英文もスラスラ読めるようになった。
- 英語がわかる、と思うことが増えてきた。
- 英語を読めている自分を実感するようになったので少し自信がついた。
- 今、e-APRICOTで送料を無料にするために買ってみたSpringboardをBook2クラスにやってみたら生徒達が予想以上に食いついてきてびっくり。こんなことならもっと早くやればよかった!! Book2 クラスの場合はスラスラ読めるようになっていたので、導入が遅すぎたか?と思いましたが、丁度良かったかもしれません。レベル10までは読破させることを計画しています。
- Springboardをやるようになって、子供達が意味を考えて類推することが習慣になってきたように思います。読んだ後、いくつか質問するのですが、Why? で聞いてBecauseで答えるのもスムーズになってきました。