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なかもとと友かな

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ご存じアプリコット出版筆頭著者。 元AIM English Studio (大阪・堺市)主宰。 Learning World series、『キッズ英語絵本シリーズ』等アプリコット出版刊行物多数。 幼児・小・中・高・大学・大人と全年齢層の英語教育実践家で児童英語教師のカリスマ的存在。 APRICOT児童英語教師養成講座講師。Learning World 認定校スーパーバイザー。
  • Vol.19 WELCOME ”PINK” のAchievement Targets作成にあたって  

    Learning World シリーズは、みなさんご存知のように「到達度評価」 を採用しています。

    「到達度評価」とは、車の免許のように、「縦列駐車ができた」「坂道発進ができた」と、一つ一つの技術を個人が習得し、課題を達成していくもので、人と比べる「相対評価」とは異なります。他人はどうであれ自己内の進歩に重点を置いた評価で、これは言語教育には必須のものです。

    Learning World シリーズでは、この到達度の課題を大きく2つに分けています。

    1つ目はテキストの中の機能を重視した文やチャンツの暗唱ができているかどうかの評価です。

    もう1つは、それぞれの機能を持つ語句や文を使って自分のことを言えるかどうかの評価です。


    Book 3 
    の過去形を例にとって説明しましょう。Unit 9-1A と2Aの過去形のチャンツを暗唱することができ(課題10) なおかつ、「昨日私がしたことを5つ言うことができます」(課題7)という課題も必要テキストであることは、皆さんもよくお分かりだと思います。 (⇒⇒ Book3のAchievement Targetsはコチラから)

    ちなみに、高学年用のCHANTS for Grammar のAchievement Targets (一番最後のページに掲載)では、課題の難易度を先生自身が決めることができるようにしています。

    このAchievement Targets(これだけできるようにがんばろう)のページは、Learning World シリーズのWELCOME to Learning World PINK (3~5歳対象の教材)以外の全巻に入れています。テキスト1冊を終えた時の到達度を示すことによって、生徒にも保護者の方にも学習の成果を可視化することができ、指導者も自分の教え方の反省する機会を与えてくれます。

     

     

    さて、今回、WELCOME to Learning World PINK book にもAchievement Targets がほしいというご要望が多かったため、新たに作成することになりました。 (2015年4月)

    w_l_world_pk

    ここで、なぜ、今までなかったのかについて説明しましょう。幼児の言語活動における発達段階の大きな特徴のひとつに、「聞いたままの音をそのままreproductionすることができる」ことがあります。拙著 『実践家からの児童英語教育法』「解説編にありますように、Canal and Swain (1980) が、コミュニケーション能力をGrammatical Competence(文法能力)、Discourse Competence (談話能力)、Sociolinguistic Competence (社外言語的能力)、Strategic Competence (戦略的能力) の4つの能力に分けて、文法能力の中に言語の構造、語彙、発音に関する知識が含まれているとするのに対して、幼児は、(大胆にも?)、英語の意味がはっきりと理解できなくても、大人に比べて完璧にreproductionできるので、音声能力を別に考えるべきだというのが私の考えです。

    ですから、幼児に英語を教える時は、Authentic (実際に起こっている事象と密接につながりを持つ)に教えるべきで、その意味がはっきりしなくても、また、英語の一文字一文字がはっきりしなくても、英語特有の発音、リズムができていればOK、一つ一つの歌やチャンツ、会話文を個別で発表することまで目指さなくても、お父さんやお母さん、先生、クラスのみんなと動作を付けたり、ダンスをつけたり、ゲームをしながら、または日常生活の中の実際の場面で楽しく言えればよいと考えています。

    著者の希望としましては、WELCOMEの PINK book は、養育者の方と一緒に学んで、お風呂に入る時や、パジャマを着る時、お片づけをする時など、一緒にチャンツや歌を歌いながら生活の中で覚えていっていただきたいのです。

     

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    今回新たに執筆したAchievement Targetsでは、敢えて先生、お父さん、お母さん、おばあちゃんと一緒に動作を付けて歌えることを目標としました。

    付録のHang-in-there (部屋ごとの身の回りの語彙チャート)は、語彙の習得ですので、 できるだけ多く覚えるように指導してください(なるべく実物の中で)。 会話文は、あくまでも場面の中で使ってください。会話文だけを取り出して暗記することにあまり意味を見出せないので、あえて、Achievement Targets からははずし、生徒用CDにも音声を入れていません。

     

    ★★★PINK book ”Achievement Targets” はコチラからダウンロードできます⇒  PINK_A.Targets

    ★★★PINK bookの商品詳細ページはコチラから

     

     

    WELCOMEシリーズ3冊(幼児対象)は、英会話のクラスだけでなく、ご家庭で養育者の方と一緒に学べるように構成しています。評価を厳しくするよりも、楽しく一緒に学ぶことが大切です。なお、学生低学年対象のクラスでYELLOW book をご使用の場合は、指導書ではなく『30 Lesson Plans for Young Learners』 の方がレッスンプランとしては使いやすいと思います。

    Yレッスンプランs

     

    Vol.18  ぴらぴらと編集会議   

    現在、私は週に1度だけ大学で教えていますが、たった週1度でも、春休みになると解放感があり嬉しいものです。おまけに大学の春休みは長い!! 前々回に書きましたように、大学に後期の成績を提出し、アプリコット出版、編集長の新井氏と3日間のバトルを終え、アメリカ、メキシコの旅行に出ました。帰国後間もなく、私の尊敬する青木昭六先生と仲間達で行っている英語教育勉強会の春の1泊遠足があり、その後、またまた、脱稿したはずの原稿にいっぱい付箋をくっつけて東京から新井氏がやってきました。新しいテキストが出版されるまでには、著者の私以外にデザイナー、イラストレーター、英語担当の編集者、native のスタッフ、音楽編曲及び製作担当、録音ディレクター、印刷担当と大勢の方が関わっていて、多くの時間がかかります。企画会議から始まり、執筆しながらも、より良いものを作るために、私と編集長のバトルは延々と続くのです。新井氏とは、ラーニングワールドシリーズをはじめ、絵本シリーズや『実践家からの児童英語教育法』と、もう20年以上、二人三脚で制作、出版していますので、お互いに相手を攻略する術を知り尽くしています。

    敵 (新井氏)は、私の大事な原稿にいっぱい付箋をぴらぴらつけて、東京から意気揚々と私の執筆場所の兵庫県芦屋市にやってきました。「先生!ここの記述がおかしいです」「この例文をもう少し短くしてください。でないと紙面に入りません」「この部分は確か、前ページにも出てきましたよ」「ここはもう少し噛み砕いてだれにでも理解できるようになりませんか」と攻めてきます。気の弱い私は、一応はすべてのぴらぴらに抵抗を示すものの、ひどく傷つくのです。

     

    そんなある夕暮れ、私は彼女をちょっと素敵なイタリアンレストランに誘いました。大型クルーザーが何隻も停泊している芦屋マリンハーバーのクラブハウスの中にある最近お気に入りのレストランです。沈みゆく太陽に照らされるクルーザーを見ながらのテラス席でのワインと食事、でも、ロマンチックな気分には程遠く、「これからまだ夜は長いですよ。食後も仕事を続けますよ!」「ワインの2杯や3杯で仕事ができなくなるなんてプロじゃないよ。はっはっはっ!」とお互いを牽制しあうこと2時間。結果、仕事場に戻り、仕事を再開してから最終バスが出るまで、アルコールが回ったのかますます饒舌になる新井氏は、ぴらぴらを振り回し、私を責め続けました。機嫌よくホテルに帰っていった彼女を見送った私は、新井氏に指摘された懸案事項が気になって酔いもふっとんでしまい、翌朝、新井氏がまたやってくるまでに、指摘された箇所をすべてrewrite したのです・・・

    「ええっ?先生、朝早くから書いてくださったんですか。ありがとうございます」と神妙な面持ちでお礼を言う新井氏。でも私はその陰の「ふふふ、やればできるじゃん」という不敵な笑みを見逃しませんでした・・・。そんな中、溜飲が下がったのは、私の愛犬が飼い主の敵とばかりに彼女の前でおしっこをしたことでした。でかした!カプチーノ(愛犬の名前)。

    次作、ラーニンワールドシリーズ“Bridge”(仮称) を乞うご期待!

    その後、元生徒達と一緒に1泊4日(!!)の驚くべきグアム旅行をこなし、私の春休みは終わりました。

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    Vol.17 ”脱immature” 英語教育編  

    「脱immature 英語教育編」を書くにあたって、immature の意味をCambridge Advanced Learner’s Dictionary で調べてみました。
    not behaving in a way that is as calm and wise as people expect from someone of your age:

    このage というのは日本国内の同年代というより、国際的にみた同年代と考えてください。
     
    自書の実践家からの児童英語教育法(2003年初版発行/アプリコット出版) に、鈴木孝夫先生の御著書『日本人はなぜ英語ができないか』から引用させていただいた文があります。(pp.6-7)
     
    「したがってこれからの外国語教育は、何よりもまず日本人としての、自分の借りものでない意見や考えを外に向かって外国語で立派に言える人、日本に固有な事情を外国人に説明して、しかも相手を説得できる人を養成する、外向きで積極的な発信型へと重点を移す必要があります。これができて初めて日本人は英語が上手だと言われるようになるのです。 それと同時に、日本語で書かれた各種の情報を素早く、しかも大量にいろいろな外国語に翻訳して海外に出せる体制を、国家としても、また大学としても急速に整えることが絶対必要です。」
    そして次のように締めくくっていらっしゃいます。
     
    「さてこのような目的にむかって学生を指導できる外国語の先生が今何人いるでしょうか」

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    この本は1999年に初版が発売されました。今から16年前です。16年間の間に日本の英語教育、英語教師は改善したでしょうか。
     
    英文法は確かに必要です。しかし、意味のない書き換えや一部訳の繰り返しでは、英語という言語の構造は学ぶことができても、それを国際的な場面で使うことはできません。
    こういったことを書くと、「“自己主張の強い、相手を言い負かす子供”を育てるつもりですか」といった誤解を受けることがあります。そうではなく、自分の明確なな意見を持ち、それに責任を持ち、相手の立場を理解した上に相手を説得する力(相手に理解してもらう力)が大切なのです。
    では、児童英語教育の段階で何を教えていく必要があるのでしょうか。同じく『実践家からの児童英語教育』に次のように書いていますので、参考になれば幸いです。
    「外国人講師が日本の子供達に英語を教えてまず驚くのは、自発的に発話する子供があまりに少ないことです。沈黙が続き、ただひたすら順番が次の人に移ることを待っている子供達が大多数です。この沈黙が「答えが解らない沈黙なのか、講師の質問の意味がわからない沈黙なのか、考えている途中なのか、講師と話したくない沈黙なのか、授業を受ける気が無い沈黙なのか、全く理解できない」と外国人講師はとまどいます。この、子供達にとって最初ともいえる国際の場の奇異に見える状況を打破するには、英語力如何の問題以前に、授業の中での心得が大切です。

     
    日本の子供達に徹底すべき「コニュニケーションのための心得」
    1. 沈黙はゆるさない。 I don’t know. I am thinking. I don’t understand. I forgot. などを使って表現すること

    2. 理解できないのは個人の責任である
       ・理解できないことがあれば、どこが解らないのか自分で考えること
         ・理解できないことがあれば、必ず質問すること
            What is… in Japanese? What does it mean?
             講師は質問のない時は全員理解しているものとみなす。

    3. クラスの全員に聞こえる大きさの声で話すのは話し手の責任である

    4. 聞こえない時、「聞こえないと」言わないのは聞き手の責任である
           (この時、丁寧な言葉を使うことは言うまでもありません)
           “Once more, please.” “(Will you say it again in )louder (voice) please.”

    5. 手を挙げるときは、相手(指導者)がはっきりとわかるように手をあげること
          自らの意思表示がない時(生徒が手を上げない時)は、あててほしそうな顔をしたり、
          目で訴えても、指導者はその子をあてない

    6.評価は「自己内評価」及び「到達評価」でおこない、人とは比べない

    7.自己の到達度を生徒自身に把握させ、自己責任を持たせる

    8.人の答え(発言)を尊重すること。たとえ間違った答えや意見であっても笑うことは許さない
     
    これらの事項が指導者と学習者の間に信頼関係があって初めて成り立つことは言うまでもありません。怖い先生ではなく、厳しいけれどしっかりとした理念と子供達に対する愛のある先生になりましょう。普段の授業の中でこれらの心得を積み重ねていくことが、国際社会でコミュニケーションをおこなう上で、ほぼ単一民族からなり、お互い甘えあっていても社会が成り立つ日本人の不利な点を改善していくことにつながるのではないでしょうか。子供達をmature にしたいと願う毅然とした態度が必要です。
     
    『実践家からの児童英語教育法』 という本は、私が英語教育の目的を「国際的に活躍する人間の育成」とし、その手段の分析を通して児童英語教育の範囲で具体的に何をするべきか、何が無駄なのかをまとめたものです。「理論からの実践」ではなく「実践から生み出された理念とその理念に基づいた実践集」です。幼児・児童英語教育がただ単なる「英語のお遊び」で終わることがないように願っています。

    Vol.16 “脱immature” クルーズ編        2015年3月

    2月初旬に早々と大学に後期の担当講義の成績を提出し、アプリコット出版の新井編集長に丸4日、拉致され原稿を何とか書き終え(?)、LAからクルーズでメキシコへ行ってきました。

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    大きなラゲージを持っての移動が年々面倒になり、最近はもっぱらクルーズに凝っています。

    バンクーバーからアラスカ、ドイツのパッサウからブダペストまでのドナウ川クルーズ、地中海、エーゲ海クルーズ、スイスからオランダまでのライン川クルーズ、イギリスの田舎のcanal のnarrow boatと今回で6回目になります。船は、レストラン・バーが10箇所ほど、プールが5箇所ほどパターゴルフ場、バスケットボールコート、スポーツクラブ、カジノ、野外映画、劇場、イベントホール などの設備のある18階立ての大型船です。(“ほど”と書いたのは9日間乗っていたにかかわらず、最後まで把握できなかった。。。)
    乗客3800人中、日本人は私たち2人だけでした。クルーズというとタイタニックのような上流社会の豪華客船が思い浮かびますが、実際は「動くグローバル老人ホーム」です。おしゃべり好きのretired族のカップルが世界中からやってきます。ですから、breakfast, lunch, afternoon tea, dinner のテーブル(8人席)につくやいなや、臨席の人たちとの自己紹介が始まります。話をした人だけでも、アメリカ人・ドイツ人・スイス人・イギリス人・カナダ人・オーストラリア人・ニュージーランド人・中国人・タイ人・マレーシア人・フィンランド人・メキシコ人と様々です。旅の話、現役の時の仕事の話、孫の話、日々の暮らしや物価の話と話題は尽きません。Formal Dinnerの夜は、男性はダークスーツ、女性はドレス姿で目いっぱいおしゃれし、男性はladyを一層大切に扱います。80歳代とおぼしきカップルが楽しそうにダンスする姿はとても素敵です。
    アメリカでは高校でも junior prom や senior prom があって、紳士、淑女教育を受ける機会がありますが、日本では社交の場で臆することなく、様々な話題を英語で話せることを目標とした“大人になる”教育の機会が少ないのは残念ですね。 「日本人って同じクルーズシップに乗っていても、いつも添乗員の指揮の元でグループで固まって行動して、他の国の人と友達になろうとしないのはなぜ?」と聞かれました。

    個々に責任を持って行動し、積極的にコミュニケーションを楽しむ人は少ないようです。

    「脱 “immature ”」  これが今後の課題です。
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    追記: 編集部の南部真生さんいわく:「メキシコまで行かれるなんて、本格的な“逃亡”ですね(笑)」

    Vol.15 ラーニングワールドシリーズと私

    あしかけ30年にわたる英語教育の中で、私は、幼児、児童、中学、高校の垣根を取り除き、常に“使える英語”を教えようとしてきました。 「なぜ、日本人が英語を使って国際的にコミュニケーションするのが苦手なのか」、「従来の英語教育のどこが間違っているのか」を探り、その日本の英語教育をどうすれば、もっと楽しく、効率良く英語を言語として習得できるのかを考え、実践し、試行錯誤を繰り返してきました。
    ラーニングワールドは、その中から生まれた全8巻のコースブックです。 WELCOME to Learning World PINK Book からTomorrow まで、執筆の都度、実際に教えている目の前の生徒一人一人の英語が少しでも進歩するようにと子ども達の顔を思い浮かべながら、書き重ねていきました。出版社の営業会議からではなく、現場から生まれたテキストです。1.LWシリーズ 「教える」という作業は、与えられた教科書をこなすことではなく、生徒全員が聴く、話す、書く、読むという4技能を使って、実際の場面で英語でコミュニケーションできるようになって、初めて「完了」するものです。 そう考えますと、英語の先生で英語を「教える」ことを「完了」した先生は何人いらっしゃるでしょうか。 6年間の英語教育の無駄を省き、もっと効率的に教えるべきです。

    PISA (国際学習到達度調査)Program for International Student Assessment によると、学力とは「学校での学校カリキュラム(知識)の習得ではなく、学校で得た知識や技能を実生活で 活用できる能力、人生のさまざまな場面で遭遇する課題を解決する能力」であるということです。

    ラーニングワールドシリーズは、英語を使う活動を第一に考えています。 英語の授受がなされて初めて解ける課題を与えて「英語を使う」体験をし、その後、チャンツや歌を使って、ターゲットの語彙や文の定着を図ります。次にターゲットの文や語彙を使って自分のことを伝える英文作りと、それを口語で相手に伝える練習があります。その過程で、子ども達は自分の考えを持ち、まとめ、相手に効率よく伝える方法を学びます。

    日本の英語教育が上手くいっていないのは、国民みんな承知のことでしょう。 既成の流れを変えるのは、むずかしいことですし、勇気のいることだと思います。 しかし、従来のパターンプラクティス、部分訳、書き換え問題から脱却し、言語教育としての英語教育に新しい一歩を踏み出すのは、私たち教師ひとりひとりなのです。「教師」という職業は手を抜こうと思えばいくらでもできる一方で、真剣に捉えると、やるべきことは限りなくありますね。
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    今回、アプリコット出版のホームページリニューアルにあたって、今までのメルマガに載せていただいた、私が感じたり、考えたりしたことを書いたエッセイを手直ししてバックナンバーとして載せています。合わせて一読いただくと幸いです。

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